【マンガノート】茂木清香さんのマンガ

昇華するのに1年かかった思い。重い~

漫画を読んで「これを描いた人に幸せを感じてて欲しい」と初めて思った。

昨夏、茂木清香さんの漫画を「鬼喰い少女と月梟」「青の母」「スイッチウォッチ」「pupa」と一気に読んだ。
どの作品にも共通していることが3点。
1)作り込まれた特殊な世界の中で、主人公たちは生死の境に強制的に追いやられる。
2)世界は主人公を(主人公は世界を)拒絶しており、死がある種の救いとして描かれている。
3)母子、父子の関係が希薄あるいは暴力的。

「世界から拒絶されて苦しい」という感情が、全編の背景に徹底的に描かれている。
「スイッチウォッチ」の主人公の女の子の超能力が象徴的だった。
(彼女の能力は、他者の悪意を感じとると、悪意を発した人間を刺し殺して『しまう』というもの。)

「愛して」「受け入れて」という感情が物語に凝縮されていた。それらは、飲み込むのを躊躇する圧倒的な濃度だった。

それでも、飲み込んだ結果、私は母との昇華できずにいた思い出を繰り返し思い出し、泣くこともできずに、奇妙な話を延々書き続けた。
混沌とした頭と心で、書き続けていく内に「幸せにならねば。」と強く思った。奇妙な話はハッピーエンドを書き殴った後で封印した。

物語の師匠が以前言っていた。
「女の子は、いつか大人になるために、心の中のお母さんを消さないといけない。」
茂木清香さんの漫画を年代順に追うと、先述の作業を、漫画を描くという創作活動で進めているのをひしひしと感じる。
そして、年代順に、両親(特に母親)への拘りが解きほぐされていくように見える。

「幸せであって欲しい」と見たこともない他人に初めて思った。
自己投影もあるけれど、とにかく、彼女の命がけの創作活動が幸せに繋がることを祈っている。