渦の中_2【下書き】

 この少女が視界の隅に入った瞬間、僕は彼女を最上級の危険人物と判定した。女子高生は生物だ、大抵の暴言はなぜか許容される。そして、彼女たちは自分たちのそういった性質を熟知している。静かに映画に没頭したいと思う僕にとっては、危険きまわりない生き物だ。少女は僕の判定などお構いないなしだ。(僕の心中での判定なので知りようもないのだが)客席への入口に近づいていく。僕は自分の身の安全を守るため、彼女の視界に入らない様に、俯いて吸いかけの煙草を灰皿に執拗に押し付けながら、少女が上映室の中へ入ってしまうのを待った。
 少女が上映室に入ってから、もう1本煙草を吸い、十分に時間が経った頃に上映室へ戻った。上映室の中に入るとすぐに少女の明るい髪色の頭を見つけた。よりによって少女は、僕の一つ前、左に2つずれた席に座っていた。後ろから少女の視線を感じる危険がないことに僕は心底ほっとして席に着いた。しばらくして、上映室内は暗くなり上映が始まった。プリマを目指すバレリーナの少女が主役のドキュメンタリータッチの映画だった。