伯父へ嫁ぐ

ある日、目が覚めたら由(ゆえ)少年は少女へと変じていた。
それを気味悪く思った親戚は、山の奥の奥に住んでいる変わり者に嫁がせることにした。
少年だった少女は、ひっそりと伯父に嫁いだ。
伯父は、祖母が嫁いでくる前に産み、実家に置いてきた子どもだった。
花嫁衣装を着ることもなく、まして花嫁行列もなかった。
嫁入り道具は櫛一つ、姉のお下がりの着物を持たされた。

見送りに戸外へ出た母は「体に気を付けて」と息子だった娘に声をかけた。
父はこっそいと神社へ出向いていたらしい。朱色のお守りを持たせてくれた。

柳行李を一つ背負った由は、歩き出した。
白々と夜が明けていく中を山へ向って歩いた。
人目を阻むように、一人で、静かに。