渦の中_4【下書き】

 スクリーンにはカエルを飲み込んだ渦だけが残った。僕は呆然として、しばらく渦を巻いているスクリーンを見つめていた。すべての画像を取り込んだスクリーンは極彩色のマブール模様だ。
 すると、渦が反対周りを始めた。目の錯角が、中心に向かっていた渦が、外側に向かい始めたように見た。外側に向かってぐるぐると巻く渦の中心から、極彩色のマーブル模様の卵が一つ吐き出された。卵を吐き出すと、渦は回転速度がゆっくりとなり始め、止まった。スクリーンには渦を巻き始める前と同じ映像が映し出されている。スクリーンの前には、見たこともない色、模様の卵だけが残った。
 静かにそこにあるという風情だった卵は、急に膨らみ始めた。どんどん膨らんでいく。スクリーンの四分の一を占める大きさまで膨らみ、まだまだ大きくなっていく。スクリーンの半分の大きさにまでなった。はち切れんばかりに膨らんでいる。僕は膨れ上がっていく卵を呆然と見ていた。
 見つめていると卵は、微かに動きはじめた。カタカタと動いていると思った瞬間、卵は弾けて、その殻はスクリーンの前から客席の中央に座る僕のところまで、飛んできた。驚いて僕は顔を背けて、目を閉じた。左頬に、何か冷たいものが当たった。