高貴な生まれとはなんぞや

王は選ばれる、狩りがうまく、思考が明晰で、大らかな気性な男たちの中かから選ばれる。
世襲制をとらないのは、最初の王に男児が生まれなかったからだ。
最初の王は、国中の男子を王の屋敷に集めて、六芸を教え始めた。
貴重な働き手である男児を独占する訳にも、多くの男児を養い続ける訳にもいかない。
選別は容赦なく、速やかに行われた。
始めは100を超える程いた男児は、10日後には半分となり、20日後には四半分となった。30日を過ぎるとさらに半分になり、半年後には3人の男子だけが残った。

その中の一人は、カンジと言った。
彼は漁師村の出で、他の男子と比べて素朴な容姿であった。
黒い肌に、大きな黒い瞳。伸ばすことを命じられている髪を、「いつでも漁師に戻れるように」と短くざんばらに短くしている。
礼節を重んじ、胡弓をたしなみ、弓を引かせれば馬上で妻鹿を狩り、書を読み、長けた算術で星を読んだ。
ただ、王になるのだという根気はなく、早く村に帰り幼馴染と結婚したいと思っていた。