渦の中_7【下書き】

 いじわるな少女の表情に少し冷静に僕はメガネを外し、目頭を押さえた。慌てるな、冷静になれ、これは夢だ、これらは一切合財夢物語なんだ、僕はもう一度強く心の中で念じた。後ろから少女の声がした。「だから、夢じゃないってば」振り向くと、僕の二つ左後ろの席で、少女は背もたれに両腕を置くようにしたあの前のめりの姿勢で、僕を見ていた。ニタニタ笑っている。
 ニタニタ笑ったままの少女は、何かつぶやいた。僕が見ている目の前で、少女は姿を消し、僕の真後ろの席に再び現れた。少女は僕に向かって白い手を伸ばしてきた。驚いて身がすくみ動けなかった僕の視界を、両手
で塞いだ。僕は反射的に目を閉じた。少女が、再び何かつぶやいた。その瞬間、僕は自分の体が浮き上がるのを感じた。