男の見た夢_8【設定】

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紋章

 

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地形図


この島には十八の部族があった。小競り合いを繰り返しつつ、豊かな土地を分け合って十八の部族は共存していた。しかし、東方の一族の三代目の若き長は、白島よりもたらされた新たな武器を戦場に持ち込んだ。新たな武器を巧みに使い、瞬く間に十七の部族を飲み込んでいった。その様は、大昔にこの土地を襲った津波のようであった。この若き長は、今は自らを王と名乗っている。この王には十七の部族から招き入れた十七人の妻がいた。王は、十七の部族の娘たちと金銀財宝を、それぞれの族長に献上させた。その代わりに、彼らの武力以外の自治を認めた。
王は、受け取った金銀財宝の量が多かった順に、その部族の娘との間に子どもをもうけた。几帳面な性格なのか、また別の意図があったのか、王はそれぞれの妻との間に子を二人ずつなした。その結果、今日では二十歳から十五歳までの王子と王女が合計三十四人いる。その大半は王宮のそばで暮らしている。
二年に一度、王に対して王子や王女たちが、その功を奏上する日がある。王以下十名の者はそれぞれの功に対して判断を下し、王都からどれ程離れた場所に配置するか決められる。与えられた土地の自治を行うことで、王としての資質を養い、民や他の部族への理解を深めることが表面的な目的だが、本来は、多くなりすぎた王子と王女とで潰し合わせることだった。
作造が出会った男は、第三十三番目の王子であり、この王子は四年連続して、この奏上会で最下位だった。次の奏上会までは、あと一年足らずらしい。
女になったことに気付いていない作造と三十四分の一の王座を狙う王子。この王子は、馬鹿正直に、南方の守りを固めることを軍議で進言し、それならばと、わずかな手勢と共に南の小島へ飛ばされた。南の島へきて早三年、中央での奏上は一度欠席している。それでも王子は自分が王座に着くことを疑っていなかった。何故他人と争わなければならないか理解できないという理由で、武芸の稽古はほとんどせず、頭はいいのだが人が良すぎて上手く知恵を使えずにいた。ようするに、甘ったれだったのだ。