島流し

罪人は皆酒を飲ませ、眠らせて島流し
嫌な思い出はすべて水に流してしまいましょう
波にさらってもらいましょう
引き潮に合わせて、舟に罪人を乗せたら
三人の男が舟を押します
合図に合わせて三人で押します
誰が押したか分からない様に三人で押します
静まり返った海の中、罪人を乗せた船は沖へと消えていく
舟が跡形もなく見えなくなるまで見送って
三人はそれぞれ引き上げる
黙って家路を急ぐ間に
「押したのは俺じゃない」と三者三様に思いめぐらせ
そして、三人とも、家につく頃には忘れている
波の音しか聞こえない海
酒に酔った罪人の大きないびき声
ぎしりと音を立てながら舟は進む
力を込めて握った舟の縁の感触
全て忘れて日常に戻る
罪人がいたこと、彼らの罪深い行いも